
硫酸銅五水和物の結晶構造

硫酸銅五水和物 CuSO4•5H2Oって、
結晶中で分子の形は本当はどうなっているのでしょうか。
銅イオンに結合しているのは硫酸イオンのみなのでしょうか、
あるいは水分子も結合しているのでしょうか、
それとも銅イオン1つに対して、硫酸イオン1つ、水分子5つが
全部銅イオンに結合しているのでしょうか。
さぁみなさんも原子のサイズになったつもりで、
CuSO4•5H2Oの結晶の中を探検してみましょう。
岡山理科大学の装置を使って、
硫酸銅五水和物の青く美しい単結晶にX線を照射し、
結晶の構造を解析した結果を紹介いたします。
※本ウェブページに掲載されている画像の著作権は坂根にあります。
※教育・研究目的でしたらご自由にお使いください。

一つの銅イオン(Cu2+)には水分子(H2O)が四つ、平面に配位しており、
その銅イオン(Cu2+)の上下にそれぞれ硫酸イオン(SO42-)が配位しています。
硫酸イオン(SO42-)から見れば、硫酸イオン(SO42-)には二つの銅イオンが結合しています。
詳しくは、下記のJPEGファイルを開いてご覧ください。
-(Cu(H2O)4-SO4-Cu(H2O)4-Cu(H2O)4-)∞と無限に繋がっていることが分かります。
またそれ以外に、どことも結合していない結晶水(H2O)もいることが分かります。
すなわち、教科書等ではよくCuSO4•5H2Oと表記されますが、
実際は[Cu(H2O)4(SO4)]•H2Oとでも言いますか、
あるいは{Cu(H2O)4(μ-SO4)}∞の無限鎖と、{Cu(H2O)4(μ-SO4)}1つあたり結晶水(H2O)が1つ、とでも言いますか、
そのような形になっていることが分かります(配位高分子の正式な表記方法は、まだ調べていません)。
硫酸銅五水和物の結晶構造(92 KB)
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結晶学的に独立な原子は以下の通りです。

結晶学的デ−タは以下の通りです。

主な原子間距離(Å)を以下に示します。

← CIFをダウンロード(cuso4.cif, 17 KB)できます。
理化学辞典(第5版)で硫酸銅(II)五水和物は

と説明されていますが、この図の右上の銅に対して、水分子は5つ配位しているのではなく
4つ配位しているはずであり、残りは硫酸イオンが配位しているはずです。すなわち、下図

の赤色の水分子は硫酸イオンの間違いであると考えております。
→ 硫酸銅五水和物の結晶構造については、下記文献をご参照ください。
J. N. Varghese and E. N. Maslen, "Electron Density in Non-Ideal Metal Complexes. I. Copper Sulphate Pentahydrate",
Acta Cryst., B41, 184-190 (1985). [ doi:10.1107/S0108768185001914 ]
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岡山理科大学 基盤教育センター 坂根弦太
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